○第2回ローカル・マニフェスト検証大会
と き 平成17年11月19日(土)13:00〜17:30
ところ 東京ビッグサイト国際会議場
○会議の概要
全国各地でローカル・マニフェストを標榜し、実践している自治体の首長、議員が一
堂に会し、その報告を行い、識者などが検証を行う。
プログラム及び登壇者は次のとおり。
・来賓祝辞 且草カ堂会長、21世紀臨調副代表 池田 守男氏
社団法人日本青年会議所会頭 高竹 和明氏
・基調講演「総選挙とマニフェスト」
早稲田大学大学院教授 北川 正恭氏
・事例報告 前ニセコ町長、衆議院議員 逢坂 誠二氏
愛知県犬山市長 石田 芳弘氏
大阪府枚方市長 中司 宏氏
慶応大学大学院教授 上山 信一氏
江刺市市議会議員 若生史明・佐藤邦夫両氏
ローカル・パーティ「新世紀」代表 松野 豊氏
河北新報社編集局編集委員 今野 俊宏氏
LM推進ネットワーク九州代表 神吉 信之氏
・検証大会 知事報告 埼玉県知事 上田 清司氏
佐賀県知事 古川 康氏
福井県知事 西川 一誠氏
第三者評価報告 早稲田大学大学院教授 塚本 壽雄氏
宮城県知事 浅野 史郎氏
・ローカル・マニフェスト推進モデル〜岩手県版〜
知事報告 岩手県知事 増田 寛也氏
県議会報告 岩手県議会議員 飯澤 匡氏
第三者評価報告 LM推進ネットワークいわて 岩渕 公二氏
・ローカル・マニフェスト推進三団体提言
・マニフェスト推進議員連盟挨拶 自民党 衆議院議員 逢沢 一郎氏
民主党 衆議院議員 玄葉光一郎氏
公明党 参議院議員 西田 実仁氏
以下報告しますが、すべて文責は内田にあります。
@基調講演「総選挙とマニフェスト」 早稲田大学大学院教授 北川 正恭氏
・H17.9.11総選挙の意味
→政治の風土、政治文化を変える制度ができた。政策を中心とした制度となり、そ
の制度が「お願い」選挙の体質を変えさせた。
→世話役、口利き、個別利益を図る者としての議員であった。
「地元に国からお金を持って来るのがいい議員」国の公金を地元に誘導するのは
立派な「横領」!
→マニフェスト選挙によって「政策中心選挙」が定着。
・小選挙区と地方分権
→中央依存型の地方自治がこれまで60年。
「国の通達待ち」の地方のあり方から、「ゲームの流れを変える」
→まず地方首長がマニフェストを掲げるべき。
→実例として九州・柳川の合併に伴う選挙。
「お願い」から「約束」へ、を実践した小さな町の町長が予想を覆し、当選。
このことは地方におけるマニフェスト選挙の始まりを意味する。
・小選挙区制とマニフェスト
→地方がエクセレントになれば、この国は変わる。
→エモーショナル、情熱的な選挙、「お頼み」選挙から、科学的に自己検証が可能な
システムへと変わるべき。
・お願いから約束へ
→マニフェストはこの国の政治の在り方を大転換させるための道具としてある。
→自治体職員は、マニフェストを掲げて当選した首長の、その約束を実現するため
の機構として機能することとなる。
→マニフェストは必要条件であって十分条件ではない。
現状公選法では、@配布できない、
A国の以降を気にしないと書けない。
そこで、@配布ができるように、またHPの動画を可能に、公選法を改正、
A首長候補者が自由に構想を訴えられる状況にしなければならない。
→地方議会にあっては政党単位の「パーティ・マニフェスト」よりも考えを同じく
する議員で形成するローカル・パーティを。これがパーティ・マニフェストを形
成させていくような方向を目指すべき。
A事例報告
○前ニセコ町長、衆議院議員 逢坂 誠二氏
→マニフェストはそもそも「標準装備」である。エモーショナル選挙に決別。
マニフェストによって、当選後の仕事の正当性が得られる。
→日本ではまだ黎明期。だからいろんなチャレンジがあっていい。チャレンジする
ことが重要。その中で、世の中を変える道具としてのマニフェストの意義に気づ
くはず。そこで真の分権はまだまだ遠いことにも気づく。それによって、世の中
を変えていくエンジンとして、マニフェストが機能することとなる。
→マニフェストに市民参加の中で取り組むと、市民参加の本当の難しさに気づく。
市民は参加することにより、政治を疑似体験することができる。
○愛知県犬山市長 石田 芳弘氏
→ミネアポリスを訪問したとき、ちょうど市長選挙の只中で、候補者と短時間会見
した。その折、日本の選挙の実情(連呼、お願い)を語ると市長「それでは市民
が迷惑するでしょう」と。同市では選挙は「静かに」行われていた。
→予算は行政が作る、市長は演説して当選する、この二つのことがマッチしていな
いのが日本の政治のシステム。積み上げ式の予算からトップダウンの予算にしな
くてはならない。それがマニフェストによって可能になる。
→NPOに委託して、マニフェスト達成状況の中間評価をお願いした。広報紙に発
表。一般紙でも大きく取り上げられた。
→市長になり、自分で総合計画を作り、その一貫性のもとにマニフェストを作成し
た。
→いま、自治基本条例の中にマニフェストを盛り込むことに挑戦中。「マニフェスト
型自治基本条例」の制定目指す。
→マニフェストはデモクラシーの「気づきの道具」である。
→マニフェストは、日本に輸入された当初「檄文」と翻訳された。マニフェストに
は細かい表現も必要ではあるが、まずは政治家としての、「檄」とも言える表現が
大切と思う。
○大阪府枚方市長 中司 宏氏
→選挙を変えよう。連呼型から政策型へ。それによって市役所が変わる。市民が変
わる。
→マニフェストといってもなかなか市民に知ってもらえない。そこで「市民による
マニフェスト検証・評価大会」を開催。5人の市民評価委員。委員は事前に3日
にわたり研修を受け、ホールに360人の市民が集う中、議論した。
市は資料提供のみ、評価に関与しないルール。
この試みにより、市民が地域社会を身近なものに感じ、市民が地域の改革に関与
することにつながる。
当日のアンケートを見ても、より身近な問題意識の高まりに貢献したことがうか
がえる。
北川氏からは、妥当性・具体性・市民への周知度、の3つの角度から、評価して
もらい、アドバイスをいただいた。
これを機に、市民への情報公開が進んだ。
たとえば、公約実現は8割まで達成したとしても、市民の認知度が低いと評価は
下がる。達成度だけでなく、市民への周知度、また挙げた内容そのものの妥当性、
これも評価して、市民からは125点という辛口の点数をいただいた(自己評価
では137点であった)。
○大阪市役所の「マニフェスト型改革」 慶応大学大学院教授 上山 信一氏
→同氏は、大阪市役所市政改革本部の一員を勤めている。
→一連の事件「カラ・ヤミ問題」へ市民の怒り「市役所は大阪から出て行け」
→「2年間でやりぬく」を合言葉の「市政改革マニフェスト」本年9月発表。
集中治療室の事業計画書という体裁。3つの診療科、38の症状にあわせた87
個の処方箋。6ヶ月かけて作成、230ページ。HPからダウンロード可。
危機対応という色合いが強い。夢、ビジョンという事態ではない。
外部30人委員会に編成権を委ねる。外部委員と市長直属チームの協同作業。
徹底的情報公開で市民にインフォームド・コンセント。
→効果として、庁内での学習ができた。言い訳ができない。議員も仕事が変わった。
その結果、行政のレベルは上がった。選挙では公開討論会を行う。マニフェスト
を用いる。このようにして市政のバージョンアップが進んでいる。
→今後の課題として、市長だけでなく局長・区長のマニフェスト、予算と人事への
反映、外部委員交えた進捗管理、目標管理文化の浸透(外からと内から)が必要。
→ちなみに3つの診療科とは、
@マネジメント改革Aコンプライアンス改革Bガバナンス改革
○江刺市市議会議員 若生史明・佐藤邦夫両氏
→議会初。プロセス重視の議員提案条例として「えさし地産地消推進条例」。
→その背景として、明H18年2月に2市2町1村が合併し「奥州市」となること
から、人口34000人中農業人口が21000人を占める江刺市として、江刺
ブランドの消滅への危惧も広がり、また一面議員とは何なのかという議論、さら
に市民と協働の条例づくりの必要性が浮かび上がった。
→議員に条例制定権があることは知っていたが、今回初の試み、容易でなかったし、
議会事務局の力量も必要である。
→江刺市議会は合併問題で議論が初めて活発になった。議会本来の姿だ。
→そんな中、市民によるシンポジウムの開催、パブリックコメントをHPで求める
などの手法を取りながら、なおかつ一般紙も詳細にこれを取り上げてくれたこと
が、成功に結びついた。
○ローカル・パーティ「新世紀」代表 松野 豊氏(流山市議会議員)
→「新世紀」は、議会版ローカル・マニフェストづくりを目指している。
→日本の地方自治制度における二元代表制での、議員のメゾンデートル(存在価値)
を追求する。それは「約束を守る」政治家、すなわち当たり前のことを、行動を
もって示すことであると考えている。このことを通じ、社会の変革につなげてい
こうとしている。
→今後の運動展開のビジョン
・05.11〜マニログ(マニフェストブログ) ブログを立ち上げる
・06.01〜マニ校(地方議員研修) 研修を開始する
・06.11 マニ大(マニフェスト大賞) 各地の実績を発表
・06.11〜マニ本(出版) 活動発表、意識啓発
・07.04 マニ選(マニフェスト選挙) 統一選でマニフェスト選挙
→「情実型選挙」から「政策型選挙」への転換を訴え、社会変革へつなげる。
ローカル・パーティが真の政策集団として機能することを目指す。これが真の地
方分権実現につながる。地域には地域に根付いた政策が必要。それを訴えるのが
政策型選挙。情実型選挙からの脱却を訴える。
○河北新報社編集局編集委員 今野 俊宏氏
→報道現場の立場から、マニフェストによる報道現場の変容を語る。
→ちなみに河北とは「白河以北」、東北6県の意。歴史的に差別風土にあって、これ
に対抗する気概を象徴。
→宮城県で今年、仙台市長選挙、衆院選、知事選と大きな選挙が続き、新報社とし
て選挙報道改革に取り組んだ。
→そこで行き当たったのがマニフェスト。どこの世論調査でもまるで図ったように、
回答者の6割が「マニフェストを重視する」と回答したことに注目。
アンケート「政策で選ぶ62.9%、人物・人柄で選ぶ18%」(知事選挙)
この「6割」を分析してみると、都市対郡部でも、老若男女でも、差がない。
→現行公選法、及び選管の運用は大きく時代から遅れていることを痛感。
→有権者は何で判断するか。新聞・テレビが圧倒的。そこで、これからのマスコミ
の役割は「政局報道」から「政策報道」重視へ。まだ過渡期であるが。
→「頑張ります」「任せてください」連呼の選挙はもう信頼されない。
→一方、マニフェストを重視しないとの回答者の言い分は、ひとつは従来どおりの
「人物・人柄派」。しかしもうひとつ、「マニフェストは分からない」という声も
重要。
→今後、新聞報道として、マニフェストをどう扱うか。
@全文掲載か。
A内容を点検することも報道がやるのか。
B市民のマニフェスト参加に、新聞報道がどう寄与するか。
こうした課題と取り組みつつ、新聞も進化していきたい。
○LM推進ネットワーク九州代表 神吉 信之氏
→九州におけるLM推進ネットワークの組織と活動状況を紹介。
→とくに、マニフェスト型公開討論会は、九州では定着。
各地の選挙で投票率を押し上げている。
選挙別来場者数
八女市長選1,500人 宗像市長選 700人
小郡市長選 400人 柳川市長選1,400人
大川市長選1,700人(外にモニターを出したほど満員)
これらの背景には、マスコミの役割が大きい。
アンケート結果で7割以上が「大変よかった、参考になった」。
→有権者比率で倍と半分以上も差がある小さな方の町長が市長に当選した柳川市長
選挙。当選した石田宝蔵旧大和町長はマニフェストを重視。新市計画の実現へも、
期限や事業費を具体的に明示。下水道事業の見直しや浄化槽1万基増設などを盛
り込んで当選。
→落下傘候補に等しかった無名の候補が現職市長に大差で打ち勝ち当選した大川市
長選挙。大川市では家具産業が斜陽、併せて環境問題からのイメージダウンで打
撃を受けていた。元福岡市(地元大川市ではない)の職員だった植木光治候補は、
家具回収システムや木くずの発電利用による大川家具の「環境ブランド」化をマ
ニフェスト公開討論会で主張、にわかに支持を集め、大勝。
→気づきの道具としてのマニフェストの効果
柳川市長選の争点のひとつとして、大赤字だった「女性センター」を、合併協議
では「廃止」、市長マニフェストでは「存続」と分かれたが、どちらを優先するべ
きか、市民が大議論、議会も傍聴満員に。
結果は「存続」に。これを通してマニフェストは広く市民に意義を知らしめた。
→前原市長選は前市長と議会との政争泥仕合の様相であったが、互いにマニフェス
トで主張。「怨念の政争」から「政策選挙」へと転換。マニフェストの威力を示し
た。
→八代市では当選した市長が自らのマニフェストを軽視。これに議会が反発。今で
は粛々と、その実現に取り組んでいる。このように検証という角度からも、マニ
フェストは威力を発揮する。
→マスコミ報道の変容
公開討論会を取材し、マスコミはその詳細を紙面で展開、比較した。
→ローカル・マニフェストの諸課題
・新人候補にとっては財政に通暁してないため、財源の整合性に期待できない。
・公選法上、マニフェストは配布できない。選管にとってもグレーゾーンで触れ
たくない部分。八代市長選挙では自治会長らの協力で全戸配布が実現。なお続
く玉名市長選挙でも、広報掲載が実現した。
→公開討論会成功へのポイント
@候補者への意義の徹底、事前説明
Aマニフェスト作成方法の詳細な説明、アドバイス。なるべく精緻なものを。
B進捗状況をHPで公開、検証方法の確保
Cマスコミの協力。地方マスコミには、まだ詳細な説明が必要。
→「推進します」など抽象的なものはだめ、公約に毛が生えた程度では不可。評価
検証に耐えるものを要求。
→これまで11回の討論会を開催。これからはその検証をする会を起こし、チェッ
クのサイクルを確立したい。
B検証大会
○埼玉県知事 上田 清司氏
→知事就任後ただちに、マニフェスト内容を盛り込んだ「埼玉行動計画」を策定。
HPに掲載、毎年進捗状況を公表している。
→一部、総合計画と齟齬を生じている部分について、議会の議決を得て総合計画を
変更。
→徹底した県政運営の見直し。@事務事業総点検A成果主義徹底B予算編成から仕
事編成へCトップマネジメント
→今年、選挙を経て改めて「埼玉グランドデザイン」を発表。10年後、20年後
の埼玉の将来像を示す。
→進捗度の明示
@すぐやります 7項目すべて実施済み
A1年以内にやります ほぼ実施済み
B4年以内にやります 順調に進んでいる7項目、努力必要2項目
→主な成果
・警察官増員全国一、自主防犯活動グループを515団体から1,241に。
刑法犯検挙率14.4%から17.9%に。
・交通事故死者数減少全国1位。事故は交差点が6割。交差点改良に力を入れ、
昭和35年の水準まで下げた。
・特別養護老人ホーム床数2万床へ。県の独自支援制度設ける。
・待機児童解消へ、受け入れ件数を大幅強化。
・ほか、産業、雇用、NPO、行財政改革などの部門で成果多数。
→知事として目指していることは@行政簡素化A財政再建B経済を強くする。
→県職員数において、県民人口1万人に13人は少なさで国内でも有数。
→マニフェストには極力数字を入れることを心がけた。ただしこのことで自分の手
足を縛ることになるのはデメリットだが。
→知事就任後、150人の課長全員と面談、40時間をかけた。そして「あなたが
課長になって、何がどう良くなったの?」と聞いた。それに答えられない課長に
は、帰りに、「あなたの時給の表」を示してみせた。
→このように、たとえば「パンフレットができたらそれで仕事は終わった」と考え
るのが「役所」。これを改め徹底的に「成果を求める」姿勢に。
○佐賀県知事 古川 康氏
→マニフェスト推進体制
@項目ごとに進捗管理担当者を置く
A担当する課を明示し、責任を持たせる
B各課の基本戦略に最重点課題として明記
→進捗管理
@年に2回、進捗状況の管理、公表。甘くしだすときりがない。
A成果に対する実績の評価。49項目それぞれに必ず責任者がいる。年1回。
→主な成果
・情報公開度 H14:全国37位→H15:17位→H16:5位
・現場に足を運び「知事とかたろうかい」県下すべての市町村に出向く
・市民社会組織(CSO)との協働事業など
・経営型の県組織へ、組織改正、庁内分権(予算と定数の枠配分)
・マネジメント組織へ、ミッションや戦略の明確化、企画・経営機能強化、
政策評価のツール活用、意思決定のルールづくり、など
○福井県知事 西川 一誠氏
→マニフェスト「福井元気宣言」
・行財政改革 報酬カット、職員5%削減、管理職手当てと超過勤務縮減など
・元気な産業 15千人雇用創出、認定農業者を1.5倍に、5千新規事業など
・元気な社会 まちなかキッズルーム100箇所、病児デイケア全市設置など
・元気な県土 北陸新幹線、舞鶴若狭自動車道などの県内着工・整備など
・元気な県政 政策形成過程からの県民参加へ「座ぶとん集会」など
→実行過程
・「政策議論」独自の手法APDSシステム
部局を超えた連携、協力のシステム、職員提案型予算外事業の実施
・「部局長との政策合意」知事と部局長間で「政策合意」、これにもとづく取組状
況の公表
・職員による自発的な「仕事の進め方改革」
県庁内ベンチャー事業、業務過程改善運動
→進捗度の公表
・県職員が日本一少ない県、日本一失業率が低い県を達成
・4年間の目標を左に、これまでの状況を右に示して比較できる表
・併せて県民へのアンケートで県民の評価を受ける
・さらに評価委員会による外部評価を受ける。知事が面識ない学者4人に依頼。
→石川県立図書館がかつて「開館時間日本一」を誇っていたので、これを抜こうと。
福井県立図書館は無休とした。これに伴う職員配置はローテーションで工夫。コ
ストは増えていない。
→常に3つの観点から仕事をチェック。
@アウトカム。いくら費やしたかではない。県民の利益で計る。
Aコストベネフィット。それだけの金をかけてよかったのか。
Bやったことが値打ちのあったことだったのか。
○第三者評価報告 早稲田大学大学院教授 塚本 壽雄氏
宮城県知事 浅野 史郎氏
→循環してはじめて意味を持つのがマニフェスト。マニフェスト・サイクル。
→外部検証可能性を主眼にチェック。
→情報提供の適切性、つまり周知に努力しているか。情報内容の適切性、つまりわ
かりやすいか、判断しやすいかどうか、についてもチェック。
→それらの観点からそれぞれの上記報告者の内容を評価。概ね良好。
→「多治見市マニフェスト作成の支援に関する要綱」の取り組みに注目。
→より良いマニフェストへ、@「概要版」を作るなど、プレゼンテーションの工夫
も評価の要素である。A外部評価も採用して発表することで、さらにより良くな
る。
Cローカル・マニフェスト推進モデル〜岩手県版
○知事報告 岩手県知事 増田 寛也氏
→実行過程
・総合計画との整合性を図り「誇れるいわて40の政策」として政策化。
・行財政構造改革プログラムも併せて策定。
・4年間200億円の枠を確保、予算調整権限を総務部から各部局に。
・中間管理職廃止(次長、課長補佐)スピードアップ図る。
・職員の戸惑い、知事自ら職員と対話、意見交換。
・議会でもマニフェスト作成する会派が増える。いい緊張関係。議会も改革。
→総合評価
・スピードアップ、政策目的指向型の業務スタイルへ転換。
・責任の明確化、職員の創意工夫、意識の変化。
・第三者によるマニフェストの検証・推進。
さらに県民の中に、チェック能力あるNPO、オンブズの誕生を期待。
・これからマニフェスト・サイクルの確立へ尽力。
・課題として、@表現のしかたや守秘義務とのからみA発表の時期B議会との関
係、が残る。
○県議会報告 岩手県議会議員 飯澤 匡氏
→県議として、知事のマニフェストを評価。
知事に追いつけ追い越せの機運が議会で高まる。一般質問にもしばしば登場。
議会での知事との論戦は活発化。
産廃、雇用の知事の掲げた2課題はスピードアップ化された解決と評価。
→議会も「議会のあり方検討委員会」を議会の諮問機関として設置。
「知事に論戦を挑む議会」と変貌した。
→若手職員の「芽生え」を感じる。職員間の活発な議論をよく目にするようになっ
た。政策的思考を主体とするグループ実行部隊が庁内に見られるようになった。
→議会内でも、議員発議の条例案づくり(今期4本)、議会改革も活発。決算、予算
特別委員会の見直し、政務調査費の透明化等。会派同士が刺激しあっている。議
会事務局に法令担当の職員を配置してくれたのがありがたい。
→知事への注文として、マニフェスト実現はいいが、たまには、執行部の長として
でなく政治家として、夢を大いに語る場面もほしい。
→議会マニフェスト
・4会派中3会派がH15統一選挙に向けてマニフェストを作成。個人の公約か
ら会派単位の政策立案へ。しかし知事に出遅れ、「会派マニフェストは知事マニ
フェストに乗った」との声も。
・まだ公約に毛が生えた程度、知事への追従というレベル、マスコミ対策の一面
もあった。しかし、それでも出すことによってアクションを起しているという
印象を持たれ、自覚も高まっている。特に政策立案機能強化への認識が高まっ
た。
・今後、条例案策定活動を活発化、議員団が県民に説明をするという段階に。
・議員マニフェストも頒布方法の緩和策が求められる。公選法改正を。
・議員はマニフェストを作るだけでなく、「住民への定期的な報告が不可欠」。
○第三者評価報告 LM推進ネットワークいわて 岩渕 公二氏
→増田知事が当選直後から、「第三者による評価」を話題にしたことから、岩手県で
はローカル・マニフェストそのものの推進よりも評価の方策についての議論が盛
んだった。
→そこでこれに応えるために「LM推進ネットワークいわて」を設立。
宮古市長選、八幡平市長選で公開討論会を開催など展開しながら、検証方法の開
発を行ってきた。
→別NPOが「県民参加型外部評価」システムを構築中。その動きは各方面で盛ん。
→知事への評価。全国に向け「がんばらない宣言」をしている知事であるが、「よく
がんばっている」。
→検証と評価に関する今後の課題
・県と市町村の権限。たとえば介護予防。知事に実行権限がない項目は、市町村
に依存することになる、という問題。
・議会の権限と行政裁量。議会のマニフェストはどのようにして実行権限を担保
するか。
・アカウンタビリティへの応答と有権者の関心。有権者にわかりやすい政策評価
の手法がさらに求められる。
→マニフェスト検証の作業を振り返り、推進という「アクセル」と検証・評価とい
う「クラッチ&ブレーキ」の機能のバランスが大事。選挙のためのマニフェスト
から「主権者のためのマニフェスト」へ定着を。
Dローカル・マニフェスト推進三団体提言
→公選法H15年改正で、国政選挙では頒布が一定の条件下で可能に。
→しかし地方の首長、地方議員選挙では、ローカル・マニフェスト頒布に多くの制約
がある。無所属首長候補は頒布できないのが現状。
→次のとおり公選法改正を提言
@有権者が入手しやすいよう、告示前後を問わず、選挙事務所、演説会場、街頭演
説の場所、公開討論会会場、政党本部・支部でも頒布を可能に。
Aローカル・マニフェストに候補者名、写真、選挙名を掲載可能に。
BHPでの公開、メール配信を可能に。また告示後もHPの更新を可能に。
○感想
当日の朝上京、開会時刻にようやく間に合い、会場に入り、閉会時刻を過ぎて夕方6
時前まで、上記のとおりみっちりと、講演を聴講してまいりました。
大変、よくわかりました。
ローカル・マニフェストというもののイメージも、これでだいたい掴めました。
先進的な取り組みに、圧倒されながら、聴き入りました。
時代は刻々と移っている、という重い重い感動とともに、暗くなった外に出ました。
同行の同輩議員と、しばらく交わす言葉もないほどでした。
理論的に、とても理にかなっている、なるほどそのとおりだと、自分の選挙経験、そ
して議員として7年の活動を振り返り、心に当たることも多々あり、大いに首肯しなが
ら拝聴しました。
そして、思うのですが、ひとたびこういう理論や、実践を垣間見た者は、もはや従来
のレベル〜議員の活動の内容、選挙の仕方など〜へは、絶対に後退する気持ちになれな
いのではないでしょうか。
まだまだ課題と失敗例、心配な諸点も抱えながらの、わが国地方制度におけるローカ
ル・マニフェストの展開であると思います。しかし、そうであったとしても、言うとこ
ろの「情実型選挙から政策型選挙へ」「お願いから約束へ」というスローガンは、まさし
く正鵠を得ているのであり、誰がなんと言おうと、わが国の地方制度のあり方は、これ
らの先進の方々の言われるとおりの方向に進むしかないと、わたしは強く思います。
これまで戦後の60年間、役所文化というものはそもそも「非公開文化」であった、
と、北川氏が話されていました。いまここにその歴史的転換が図られる。役所は「公開
文化」に、そして選挙で選ばれた者は掲げた約束事を着実に実現するために奔走するの
であり、決して有権者、地元選挙母体のために利益を誘導して、その対価として次の選
挙で当選させてもらう、というあり方は、「公開」という制度の下ではもはや通用しない
ものとなる。別の講演の機会で北川氏いわく、「当選して市長になった。お世話になった
業者に仕事を回してあげる…。どうぞそういうことをしてください。すべて公開、市長
のやっていることはすべて市民の知るところです」と。
現実、生身の議員として、わたしもさまざまに、市民の声を伺います。その中には、
そうした利権がらみの話も出てきます。そのたびに、わたしはやり切れない思いになり
ます。あまり関わりたくはありません。しかし、もしそこに恣意や不正があるのなら、
恣意や不正の介入できないような仕組みを創ることは、その悪を糾弾することと同様に
わたしども議員の仕事と申せましょう。
また一方、わたしは思うのですが、そういうことをしなければ当選することができな
い、という現実もまたあるのかということです。それは今述べたような法外で悪辣なこ
とだけを指すのではなく、個人的な頼まれごとのレベルまで、さまざまに市民の皆さん
は議員を頼り、相談をかけてくれます。わたしは市民の皆さんからいただく相談事を3
つのカテゴリーに分けています。個人、地域、政策、この3種類ですが、確かに、議員
にでも頼まなければ言っていくところがない、という窮地の中からの市民の声です。
わたしは、実はこの中の一部分は、市民の皆さんにとっていわゆる「税金の二重払い」
ではないかと、最近ひそかに考えています。本来、市役所に行って話をもちかけるべき
ところのものを、議員に言ったほうが手っ取り早い、とか、議員の力でなんとか実現を、
とかいう類のものです。
長い長い、60年という戦後の地方政治の文化の中で、こういう仕組みが出来上がっ
ていったのだから、それをわたし一人でどう頑張っても、改革していくことはできない
でしょう。前述の3つのカテゴリーのうち、政策案件はまさしくわれら議員に仰せ付け
いただくとありがたいことであり、また一方個人的な悩み相談も、選挙でお世話になっ
たご恩返し、またひとりの人間の振る舞いとして、できる限り力になって差し上げるこ
とはいささかも負担とは思いません。しかし、「議員の力でなんとかして」とか、「役所
に行ってもらちが明かない」という声が背後にある案件は、それは長期、わたしの議員
としての全時間をかけてでも、改善していかなければならないだろうと、わたしはこの
ように考えております。
そこでわたしは以前より、市に「市民なんでも相談窓口」を設置し、ひとたびは、こ
のセクションが市民の声を承り、「あっちに行って、こっちに行って」というたらい回し
を徹底的に排していく、このことを提言しています。道路に危険箇所があれば、それが
国道であろうと県道、市道であろうと、市民には関係のないことであり、市民でなく市
職員が「あっちに行ったり、こっちに行ったり」してくれればいい、そう考えています。
また市民の望みが叶う、叶わないは別として、いかにも不親切で早口で専門用語をま
くしたてる、そんな市役所は徹底的に改善されるべきで、まさしくこういう職場改善、
サービスのあり方改善が職員の中から自発的に行われるようにならないといけない、わ
たしは常々、そのように考えております。
さらに一方で、「議員の力でなんとかして」という発想は、本当はあってはならないし、
誰が頼んで行こうが、役所の態度と判断は同じ、というのでなければ、極論すれば税金
は不平等、ということにもなりかねません。
いま、こうしてローカル・マニフェストに関する聴講を終えて、しみじみと実感する
のは、この60年の地方政治のあり方、文化の質が、まさしく音を立てて転回している
のを目の当たりのしているという思いです。
端的なわたしの感想を述べますが、そのような時代は、自分の議員在職時代に本当に
具現されるのか、という遠い心配もしています。
しかしながら、ひとりで相談相手もなく、孤独に呻吟しているという時代でないこと
だけは、これで明白です。
議員は、未来の丸亀市のために、よりよいまちづくりを政策提言するのが本業であり、
いま起こっている問題を、どうすれば対処できるか、未来に糧とできるか、方策を構想
していくことこそが使命であると思います。まさしく、マニフェストの時代はわたしの
この展望を現実のものとしてくれる、光明のように思えてなりません。
さて、その実現のために、最もボトルネックと思われるものは何でしょうか。
それは市民の意識だと、わたしは申し上げたいのです。
しかし、市民の意識が変わるも変わらぬも、これからの議員や行政のやり方次第とい
うことも言えます。先進的な感覚でことに当たる一部の有識者たちがマニフェスト理論
を標榜したからといって、どうしてたちまちに、市民の政治意識、議員へのイメージが
簡単に変わるでしょうか。それはあり得ません。
したがって、ここにわたしのこれから取り組むテーマが明確となります。
それは、卑近な面としては引き続き、「なんでも相談窓口」の設置を主張しつつも、行
政のあり方、首長の指揮の執り方に、やかましく提言をしていくことです。同時に、「議
員は何をしているのかわからない」という市民の失望と暗鬼の声を晴らすべく、明快に、
議会の活動、議員の活動をあらゆる手段を講じて市民にお知らせできるよう、議会同僚
各位の賛同を根気よく勝ち取っていく活動です。
ところで、議員という存在は予算を執行するでもなく、職員に命じられる立場でもあ
りません。報告の中にもあったとおり、首長のマニフェストと議員のそれとは、本質的
に異なるものであることを認識する必要があります。
その上で、わたしは、議員には市役所の仕事を監視し、改善させていくという本来の
使命に照らし、ここに自らのマニフェストを掲げる根拠があると思っております。すな
わち役所改革、予算の仕組みや職員の仕事の品質向上などを含めた行政のシステム改革
こそが、議員のマニフェストに取り込め得るもっとも正当な分野なのではないかと考え
ます。
ローカル・マニフェストというものが、閉塞した地方行政、三位一体の国の改革で、
一面袋小路に追い込まれていくかのような印象さえ覚える今日の地方行政の状況にとっ
て、ありがたい福音、一縷の光明をもたらす救済の糸のようにも思えますが、また一面、
それは現実の地方議会の現場を振り返るとき、「そんなに易々といくものか」というため
息の暗雲にも遮られます。
しかし、時代はまさしくローカル・マニフェストの時代と信じてまちがいないでしょ
う。その企ての失敗は、この国の失敗であり、市民国民の未来の不幸を意味すると言っ
て過言ではないでしょう。わたしはそう信じるに至りました。いくら不可能のサイドか
ら言い訳や反論が述べられても、この「感想」の冒頭で述べたとおり、もう、後に戻る
という考えはできないものです。
議員は、自らのマニフェストに、「いついつまでに、これこれを、いくらの予算でやり
遂げます」といくら書きたくとも、それはできません。執行権限のない議員が市民に対
し、どうしてそのような大それた約束を、議員候補者は結ぶことができるでしょうか。
しかし、それでは議員というのはなんのためにいるのか、この原点の問いに立ち返れば、
「いついつまでに、これこれを、いくらの予算でやり遂げるよう、執行部を必ず動かせ
て見せます」というお約束は、ぜひともしなければならない。その当面のわたしの課題
は、行政改革、マネジメント革命で、市民のための市役所を実現してみせる、というお
約束に他なりません。そして市民がマニフェストを詳細に検討し、討論会に傾聴してく
ださって、粛々と意中の人を決定する、政治を託してくださる、そのような、ローカル・
マニフェスト構想が描く真の民主政治、価値ある地方政治、そして品質の高い選挙制度
を実現させるために、わたしも微力の限りを注がせていただきたい、そんな決意をあた
らにした、そのような今回の聴講でありました。